Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
がん
雁
田中 貢太郎
Read 雁 (がん) by 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 3,848 characters · 8 screens
と、漁師は悦しそうに云った。
「なんぼ天から授った金でも、女を売ろうと云うには、よくよくのことがあったからじゃ、こんな金をとっては、神様のお叱りを受けるよ」
「それもそうだな、困っておるだろうなあ」
「困っておるとも、子を売った金じゃないか」
「そんじゃどうしよう」
「捨てた人に戻してやりよ」
「捨てた人が判るもんか、雁が首へかけておったじゃないか」
「四日市屋と書いてあるから、旅籠屋仲間に往って聞きゃ、判るよ」
漁師は財布を持って家を出て、魚を持って出入する宿の旅籠屋で聞くと、四日市屋は一身田に在ると教えてくれたので、其の足で一身田の四日市屋へ往き、それから久兵衛の家を尋ねて往った。
そして、漁師が久兵衛の家に着いたのは八時に近い比であった。久兵衛と女房は午飯も喫わずに地炉の傍でぽかんとしていた。
「お前さんが久兵衛さんか、お前さんは財布ぐるみ金を捨てさっしゃりはしねえのか」と、漁師は久兵衛の顔を覗き込んだ。
「六両二分入れた財布を捨てました」と、久兵衛は云った。
「そんなら、私が拾って此処へ持って来た。受けとらっしゃれ」と、云って漁師は懐から財布を出した。「たしかに六両二分と、書類が入っておる」