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せつれいきじ
雪霊記事
泉 鏡花
Read 雪霊記事 (せつれいきじ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 6,532 characters · 14 screens
……ザザッ、ごうと鳴って、川波、山颪とともに吹いて来ると、ぐるぐると廻る車輪のごとき濃く黒ずんだ雪の渦に、くるくると舞いながら、ふわふわと済まアして内へ帰った――夢ではない。が、あれは雪に霊があって、小児を可愛がって、連れて帰ったのであろうも知れない。
「ああ、酷いぞ。」
ハッと呼吸を引く。目口に吹込む粉雪に、ばッと背を向けて、そのたびに、風と反対の方へ真俯向けになって防ぐのであります。こういう時は、その粉雪を、地ぐるみ煽立てますので、下からも吹上げ、左右からも吹捲くって、よく言うことですけれども、面の向けようがないのです。
小児の足駄を思い出した頃は、実はもう穿ものなんぞ、疾の以前になかったのです。
しかし、御安心下さい。――雪の中を跣足で歩行く事は、都会の坊ちゃんや嬢さんが吃驚なさるような、冷いものでないだけは取柄です。ズボリと踏込んだ一息の間は、冷さ骨髄に徹するのですが、勢よく歩行いているうちには温くなります、ほかほかするくらいです。
やがて、六七町潜って出ました。
まだこの間は気丈夫でありました。町の中ですから両側に家が続いております。この辺は水の綺麗な処で、軒下の両側を、清い波を打った小川が流れています。