Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
かみなり
雷
海野 十三
Read 雷 (かみなり) by 海野 十三 (うんのじゅうざ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 19,706 characters · 40 screens
――彼女は、もうこうなれば、彼から恨みがましい言葉を聞いたときには、なにもかもその場に勇敢にぶちまけて、彼の卑屈な性根を叩きのめし、揚句の果に死んでしまってもいいと決心をした。
そこでお里は、重い花束を左手に持ちかえて、しずしずと奥の方へ進んでいったのであった。
「ほんとに四郎さんだったわネ。……ずいぶん暫くでしたのねえ。……」
四郎は木乃伊のように硬くなっていた。
「やあ、お里ちゃん。暫くでしたネ。……ところで今度は、御両親たちは飛んだ御災難で……」
「ええ、飛んだことになりまして。……」
四郎の言葉には、すこし余所余所しいところがあるばかりで、一向恨みがましい節も見えなかった。お里はこれを感ずると、それまでの張りつめた気が急に緩んで、全く弱い女になりきってその場に泣き崩れた。
すこし遅れて入って来た英三は、この場の光景に、ムラムラと憤懣の気持を起した様子で、
「おお貴方が北鳴君ですか。僕がお里の亭主の英三です」
と、叩きつけるように云った。
それを聞くと同時に、四郎の顔から、今までの含羞や気弱さが、まるで拭ったように消え去った。彼は、くそ落付に落付いて挨拶を交わした。