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きりをけすはなし
霧を消す話
中谷 宇吉郎
Read 霧を消す話 (きりをけすはなし) by 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 7,903 characters · 16 screens
化学的方法は、充分効果を出すように実際にやろうとすると、いろいろ困難な点が出て来る。それで一番直接な熱式方法を考えてみる。飛行場の大気を暖めるなどというと、すぐその熱量は天文学的数字になってしまうであろうという気がする。特にわが国ではそういう迷信が一般に浸み込んでいて、熱式はあまり問題にされていないようである。もっとも莫大な熱量が要ることは本当であるが、B29一千機の編隊というものが、もはや天文学的数字では無くなっている今日、熱式も頭から問題外にすることもないであろう。
ハウトン等の研究の前年、即ち一九三六年の四月、英国のリーズ大学で世界各国の学者が集まって、霧や煙についての研究討論会を開いた。ファラデー学会の主催である。霧の人工消散については英国のブラント教授が講演し、熱式と化学的方法との外に、電気的と機械的との方法を挙げている。ブラントの計算では、風速一メートルの時幅五十メートル長さ六百メートルの滑走路上の霧を十分間消すのに、石炭ガスを燃すとすると、ガス代三十五ポンド程度の量が要るということになっている。この計算には不備な点が沢山あるが、熱式も必ずしも天文学的数字の勢力を要するとは限らないというのは本当らしい。