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あおいめがね
青い眼鏡
野村 胡堂
Read 青い眼鏡 (あおいめがね) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,201 characters · 24 screens
三
「何をつまらない、赤と青が反色で、一方を濃く見せる色は、一方を消す位の事は、小学校の生徒も知ってるよ」
「おやおや、何時の間にやら島さんも、中島さんも、松井さんも、皆んな居なくなっちゃった、何うしたんでしょう」
芳野絢子は美しい眉をひそめて四方を見廻します。
「サア――」
宇佐美六郎の顔の六つかしさ、眉も眼も鼻も口も、キリリと引締って、次の間に通ずる厚っぽいカーテンへ、その鋭い目を屹と注ぎました。
夜十一時、階上の都銀行では、宿直の小使が、最後の見廻りを始めた様子、重い戸を閉す音が、かすかに此処まで響きます。
三
一方は警視庁の刑事部長室、それから三十分後に起った事です。
「如何でした、花房さん」
「大体の見当だけは付きました、もう一と息というところで行詰まって居るのです」
「大谷千尋の正体を突き止めたのですね」
「見当は間違わない積りですが、単に私の見込みで、証拠というものが一つもありません」
「フーム」
一人は富田刑事部長、一人は、申すまでもなく宇佐美六郎に変装した、名探偵花房一郎です。禿茶瓶の精巧な鬘を取り払うと、下からは漆黒の髪が現われて、顔も何んとなく若さと鋭さと清らかさに輝いて、宇佐美六郎のおもかげは少しもありません。