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せいあどうきだん
青蛙堂鬼談
岡本 綺堂
Read 青蛙堂鬼談 (せいあどうきだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 121,438 characters · 238 screens
「これはさるお旗本のお屋敷から出ましたもので、箱書には大野出目の作とございます。出どころが確かでございますから、品はお堅いと存じますが……。」
紐を解いて、蓋をあけて取出した仮面をひと目みると、父はびっくりしました。それはかの猿の仮面に相違ないのです。
孝平はそれをどこかで手に入れて、大野出目の作なぞといういい加減の箱をこしらえて、高い値に売込もうというたくらみと見えました。そんなことは骨董屋商売として珍しくもないことですから、父もさのみに驚きもしませんでしたが、ただおどろいたのは、その仮面がどこをどう廻りまわって、再びこの家へ来たかということです。
その出所をきびしく詮議されて、孝平の化けの皮もだんだんにはげて来て、実は四谷通りの夜店で買ったのだと白状に及びました。その売手はどんな人だと訊きますと、年ごろは四十六七、やがて五十近いかと思われる士族らしい男だというのです。男の児を連れていたかと訊くと、自分ひとりで筵の上に坐っていたという。その人相などをいろいろ聞きただすと、どうも上野に夜店を出していた男らしく思われるのです。いくらで買ったと訊きますと、十五銭で買ったということでした。