Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Read 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,984 characters · 28 screens
「へえ、さようでございます」
ひょろ松は、別な袂から揉みくしゃになった赤い薬の包み紙を取りだし、
「ところで、こんなものがそこの屏風箱のかげに落ちていた。この通り印籠の中に残っている薬の包み紙と同じなんだが、こりゃいったいどうしたわけのもンだろう」
悪相というのではないが、ひと癖ありそうな面がまえ。ズングリと肥って腹が突き出し、奥山の高物小屋で呼込みでもしたら似あいそうな風体。
藤五郎は、きかぬ気らしく太い眉をピクリと動かして、
「それがどうしたとおっしゃるんです」
「どうしたもこうしたもねえ。俺が訊いてるんじゃねえか。それに返事をすりゃアいいんだ。この包み紙はこの印籠から出たものだろうと、そう訊ねているんだ」
「それはあっしが申しあげるより、あなたがごらんになったほうが早いでしょう」
「返事をしたくなかったらしなくてもいい。じゃア、別なことを訊ねるが、こんなところに印籠が落ちているのはどういうわけなんだ」
「存じませんです」
「印籠に足が生えて、ひとりでここまで歩いて来たか」
「ご冗談。……それはおもんが持ちだしたので、それでこんなところにあるんだろうと思います。