Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Read 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,783 characters · 22 screens
……切先をあわせられたやつこそいいめいわくだ。鉄炮洲の二歳鱚なみにされちゃアおかげがねえからの」
ひょろ松のほうは、心も落ちいぬようすで、むさんにさむらいものをにらみつけ、今にも竿を捨てて、そのほうへ走り出しそうにする。顎十郎はその手を控え、
「ひょろ松、おまえらしくもない、うわずった真似をするな。おまえが一人でとびこんで行ったって、繩をかけられるような相手じゃない。やくたいもねえいのちの使いかたをしちゃアならん」
といって、竿を肩にひっかつぐと、
「じゃ、おれはこれでけえるぜ」
「阿古十郎さん、なんとかひとつ手を貸して……」
顎十郎は、にべもなく袖をふり払って、
「じょうだんいうな、おれなんぞのでる幕じゃない。おれは、番所で古帳面を繰っている例繰方だ。人殺しの肩に手をおくような、いやな真似はしねえのだ」
「でも、みすみすこうして……」
「あわてるな、ひょろ松、いま汐があげて来たばかりだ。あのさむらいものはまだ半刻、小半刻ここにいる。その間に帰ったら、また明日出直してこい。お彼岸ももうすぎた、今日でなければ網をおろせないということもあるめいからの。……だが、よけいなことだが、ひとことだけ言っておく。