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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Read 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,040 characters · 26 screens
「して、その次第は?」
「その次第は、鶴御成の前日に『瑞陽』が死んだという、一点にかかっております。前日まですこやかであったものが、さしたるわけもなくこの日に死んだというのが不思議。かならずや、なにかわけあいのあることに相違ございませぬ。……ここのところを突きさぐれば、この事件はわけもなく解けあうはず。下手人はかならずかこい場のうちにあると見こみをつけました。そのわけあいも、わたくしには、うすうすわかっております」
「それは?」
藤波は首をふって、
「ひょっとすると、人間ひとりの命にもかかわる重大な事柄。推察だけで、迂濶にそれを申しあげることはできかねます。委細は、よろず見分の上、とどこおりなく開陳いたします。なにとぞ、それまでは」
というと、急に甲斐守の顔をふりあおぎ、
「それについて、ひとつ、お願いがございます」
「申して見よ。身にかのうことならば、どのようなことでもきいてとらせる」
「どうか、乗継の早駕籠を一挺」
「早駕籠を、どうする」
「申しあげるまでもございません。これから上総へ顎十郎を探しにまいるつもりなのでございます。どうせ、しょんべん組の連中のことですから、ひろい利根すじでマゴマゴしてるばかりのこと。