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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Read 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 14,028 characters · 28 screens
「これで、すっかり、あたりがついた。……なるほど、あのしゃらくな閑叟侯ならこのくらいのことはなさりかねない。……お前らも知ってるだろう。斎藤派無念流の斎藤弥九郎、……閑叟侯が手に品をかえてせっせとお遣物をおくって、ようやくお抱えになるところまで漕ぎつけたところを、紀州さまが横あいからだんまりでさらってしまわれたことがある。……つまり、こんどはその仕返しをなさったのだ」
と言って、日ざしを眺め、
「おお、もう辰刻か。あまりゆっくりかまえてもいられねえ。おれは、これからむこうへ乗りこんで行って、じゅうぶんに調べあげ、くわしく復命書をつくっておくから、朝太郎、お前、夜ふけになったら、御用部屋の窓下へ受けとりに来い。そして、夜があけたらすぐに池田さまのお屋敷におとどけするんだ、いいか。……それから、千太、おめえは加役のお役宅へ行ってそれとなくわけを話し、おれが朝の辰刻になっても帰らなかったら、組頭に様子を見させによこしてくれ。……気の荒い佐賀っぽうの領地へ乗りこんで行くんだ。どうせ無事じゃアすむめえ」
駕籠盗人
「ねえ、組役、あ、あまり部屋で、見かけねえ顔だが、いままで、ど、どこにいらしたんで……」