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ふうりゅうばけものやしき
風流化物屋敷
山本 周五郎
Read 風流化物屋敷 (ふうりゅうばけものやしき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 20,228 characters · 40 screens
仏間、これが御隠居さまで廊下のそちらが旦那のお寝間、へい、こちらへ曲ってこれが奥のお客間、お控え、旦那のお居間と、あらましこうなっておりますんで、へい」平之助は温和しく聞き歩いていたが、すっかり見てしまうとやおらこう云った、「ふむ、で……この家の主人はなんという人だ」「へっ?」権八は旦那を見た、「な、なんと仰しゃいましたんで?」「それでこの家の御主人はどういう人かと訊いているんだよ」「とすると」権八は手を頭へやった、「それはその、詰るところ、旦那でござりましょうがな」「旦那というとこのおれか」「……で、ござりましょうがな」「おまえはどうかしているぞ」平之助は首を振りながら、おれには隠居だの御新造なんかありやしないと呟いたが、そのとき彼はふと庭へ眼をひかれた、女竹の筍がむやみとにょきにょき突立っている庭のまん中に、例の柘榴がいま満枝に朱色の花を咲かせているのである。荒れ放題に荒れた周囲の風物に対して、その華やか過ぎる毒どくしい色は妖気を放つかのようにみえた。平之助はこの景観をつくづく眺めてから、やがて人の好さそうな微笑をうかべながら、「うん」と頷ずいた、「なかなかいい、うん、――こりゃあなかなか閑静でいい」