Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

えきふにっき

駅夫日記

白柳 秀湖

Read 駅夫日記 (えきふにっき) by 白柳 秀湖 (しらやなぎしゅうこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 34,989 characters · 69 screens

Aozora Bunko

潮が満ちたのであろう、緩く石垣に打ち寄せる水の音、恐ろしい獣が深傷にうめくような低い工場の汽笛の声、さては電車の遠く去り近く来たる轟きが、私の耳には今さながら夢のように聞えて、今見た千代子の姿が何となく幻影のように思いなされた。

「おい、汽車が来たようだよ」という小林の声に私は急いで手荷物を纏めてプラットホームに出た。

いつの間に来たのか乗客はかなりにプラットホームに群れている。蘆の姿も千代子の姿もさらに見えない、三等室に入って窓の際に小林と相対って座った。一時騒々しかったプラットホームもやがて寂寞として、駅夫の靴の音のみ高く窓の外に響く、車掌は発車を命じた。

汽笛が鳴る……

煙の喘ぐ音、蒸汽の漏れる声、列車は徐々として進行をはじめた。私はフト車窓から首を出して見た。前の二等室から、夜目にも鮮やかな千代子の顔が見えて、たしかに私の視線と会うたと思うと、フト消えてしまった。

急いで窓を閉めて座に就くと、小林は旅行鞄の中から二個の小冊子を出して、その一部を黙って私に渡した。スカレット色の燃えるような表紙に黒い「総同盟罷工」という文字が鮮やかに読まれた。