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ましょうのおんな
魔性の女
大倉 燁子
Read 魔性の女 (ましょうのおんな) by 大倉 燁子 (おおくらてるこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 9,898 characters · 20 screens
数寄を凝らした部屋を物珍しそうに眺めていると、庭下駄の音をわざと大きくたてながら、先刻の女中がお銚子とビールにちょっとしたつまみものを運んで来た。
「御用がございましたら、ここのベルをお押し下さいませ」
本庄の座っている壁際に、ベルが取りつけてあった。女中が出て行くと桃子はお銚子を取り上げて、本庄の盃についでから、自分はビールを呑んだ。
「まさか、奥様、あなたと私とのこと、御存じないんでしょう?」
「多分ねえ。君が僕の病気見舞いに来た時、あとでいやに褒めてたから――、どうだかなあ」
「知れたら困る?」
と眼で笑った。
「困るなあ。だが仕方がない。君とはどうしたって別れられないもの」
「だって、奥様は絶対にやかない人でしょう?」
「うむ。だが――、嫉妬れる方がいいな。黙ってただじいと眺めていられるのは辛い」
何を思い出したのか、本庄はちょっとべそを掻くような表情をした。酔いが出て、色の白い上品な顔にほんのりと赤味がさして、酒にうるんだ眼が美しく見えた。桃子はコップを唇に持って行きながら、惚れ惚れと彼の顔に見入っていたが、
「私はあなたが好きなんだから、奥様が怒っても、あなたに捨てられない限り絶対に別れないわよ」