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あわびのみずがい
鮑の水貝
北大路 魯山人
Read 鮑の水貝 (あわびのみずがい) by 北大路 魯山人 (きたおおじろさんじん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 952 characters · 2 screens
あわびの水貝は、あわびを切っただけでよいようなものであるが、これは元来、江戸前の料理だ。それと言うのも、関西にあわびがないからだ。あわびにかぎらず、貝というものは、東京を本場としなければならない。東京のほうは品物も豊富なので、料理法も心得ている。私どもも、そのコツは江戸前の料理から覚えたのだが、あわびの水貝料理は、あわびを固くすることが秘訣だ。まず生きのいい雄貝を塩をたくさん使って揉む。そうすると、塩のために、石突きが石のように固くなる。塩をたくさん用いれば用いるほど固くなる。塩が少ないと中の方までは固くならない。上皮だけが固くても、中の方がグニャグニャしていては余り美味いものはつくれない。中まで固い方がよいのだが、それは生きのよいものに塩を多く用いることで、これが水貝のコツである。
肉面に苔のついたような青いのが雄で、必ずこれを用いる。身の取り方はいろいろあるが、料理人の仕方は、あり合わせの庖丁や、わさびおろしの取っ手の先で起こしている。しかし、一番安全にやる方法は、御飯をつける杓子の小さいのを貝の底に入れて起こすことで、これだと貝に傷がつかない。