Japanese reading practice

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なるとひちょう

鳴門秘帖

吉川 英治

Read 鳴門秘帖 (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 56,957 characters · 114 screens

Aozora Bunko

「お怒りなすっちゃいけません。だから、乗物はないと、まっすぐに申しあげているんで」

「お前は私をなぶるから嫌いさ」

「エエ、どうせ嫌いは分っております。なにしろ大阪表にいた頃から、この宅助は、仇役にばかり廻っておりましたからね」

「ずいぶん私をひどい目に会わせました」

「またお怨みでござンすかい」

「一生忘れやしませんとも」

「じょ、じょウだんじゃねえ!」

と仲間の宅助、下司らしく頭を掻いて、

「そのお怨みはお門違いでござンしょう。ねえ、主人持ちのかなしさに、わっしはただ、いいつけられたことを真ッ正直に承るだけのこッてすぜ。命がけで安治川の渡船場から、お前様を引ッさらってきたり、長持の底へ入れて綱倉の番人をしたり、ずいぶんロクでもねえことはやりましたが、その揚句に、思いを遂げて、うまい花の汁を吸ったのは、すなわち、手前のご主人様――怨むなら、その森啓之助様をお怨みなさいまし」

「知らないよ……」

「そう、早くお歩きなさいますと、またすぐに息が喘れますぜ」

「――お前も怨むし、啓之助様も私は怨む……。ああ、こんな国のこんな山郷を歩こうとは思わなかった」

「いけねえいけねえ。