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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
Read 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) by 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 296,741 characters · 584 screens
その折、旗太郎は壁のテレーズの額を取り去り、伸子はレモナーデを毒味せり。なお、青酸を注入せる洋橙を載せたものと推察さるる果物皿を、易介が持参せるはその時なれども、肝腎の洋橙については、ついに証明されるものなし。
六、午後十一時四十五分頃。易介は最前の人影が落せしものを見て、裏庭の窓際に行き、硝子の破片並びにファウスト中の一章を記せる紙片を拾う。その間室内には被害者と鎮子のみなり。
七、同零時頃。被害者洋橙を喰す。
なお、鎮子、易介、伸子以外の四人の家族には、記述すべき動静なし。
四、黒死館既往変死事件について(略)
五、既往一年以来の動向
一、昨年三月四日 四人の異国人の帰化入籍。
一、同 三月十日 算哲は日課書に不可解なる記述を残し、その日魔法書を焚くと云う。
一、同 四月二十六日 算哲の自殺。
以来館内の家族は不安に怯え、ついに被害者は神意審問法により、その根元をなす者を究めんとす。
六、黙示図の考察(略)
七、動機の所在(略)
読み終ると法水は云った。
「この箇条書のうちで、第一の死体現象に関する疑問は、第三条の中に尽されていると思う。外見は、いっこう何でもなさそうな時刻の羅列にすぎないよ。