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くろふねぜんご
黒船前後・志士と経済他十六篇
服部 之総
Read 黒船前後・志士と経済他十六篇 (くろふねぜんご) by 服部 之総 (はっとりしそう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 121,901 characters · 247 screens
二
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そのときの水戸建白書は文政二年打払令(一八二五年)そっくりの口ふんを漲らせたものだった。しょせん水戸斉昭の尊王攘夷は天保薪水令(一八四二年)和親条約(一八五三年)と、鎖国厳制を弛めては蹂躙し去った幕閣にたいする幕府祖法の怒りであった。
だが、中期以降の国内経済の統一的傾向に加えて、いまや開国が経済のより高度な国民的統一を必然化したとき、畢竟地方分権に基礎をおく幕府的統一――水戸派尊攘の提唱はその主観いかんにかかわらず、新たな革命的内容を転生しなければならなかった。
二
ところで、幕権に資すべきはずの副将軍的スローガン尊王攘夷は、たちまち、幕政を改革して大藩の権力を伸張せんとする雄藩ブロックの戦略語として襲用された。
斉昭の尊王攘夷唱導は、たまたまその子慶喜の将軍職立候補と時を同じうしてなされた。ペリー来当時の当首相阿部勢州は「攘夷」と継嗣問題を交換することのできた協調政治家だった。だがこの交換は幕府にとって大額の赤字になった。京都に奏上して「政道奏聞に不及」る祖法を覆えしたこと、同じく各藩論を従前通り無視する代りに在府諸侯に開鎖意見を徴したこと、そして何よりもそれによりて水戸と薩摩以下の雄藩ブロックの形成に資したことなど。