Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

あとがき(『みやもとゆりこせんしゅう』だいいっかん)

あとがき(『宮本百合子選集』第一巻)

宮本 百合子

Read あとがき(『宮本百合子選集』第一巻) (あとがき(『みやもとゆりこせんしゅう』だいいっかん)) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 2,006 characters · 5 screens

Aozora Bunko

「一つの芽生」は、弟の死という事実に面して、その悲しみをどこまでも客観的に追究し、記録しておこうとする熱意によってかかれた短篇である。今日、よみかえしてみて興味のある点は、この短篇が、死という自然現象を克明に追跡しながら、弟をめぐる人間関係が、同じ比重で追究されていないところである。これは、なぜだったのだろう。

生きる歓喜にむせぶような心もちの少女が、死の迫って来る力、生命の消されてゆく過程に、息をのんで凝視したこともわかるが、しかし、人間関係が二次的に扱われたことに、意味ふかい限界が示されている。十九の少女は、自分の日々がその中で営まれている環境の内部にある複雑な家族関係とその感情、弟の短い生涯を悲劇的にした家族制度の因習ということには、とりくむ実力をもっていなかったことが、この短篇に語られているのである。

「貧しき人々の群」「日は輝けり」などで、環境をとび越えられそうに見えた一人の少女の生活と文学との現実の過程は、「一つの芽生」に暗示されている環境そのものから来ている無力と未熟さによって、ひきもどされ、更にきびしいもみ合いに向わせられたのであった。