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あるおんせんのゆらい
ある温泉の由来
佐々木 邦
Read ある温泉の由来 (あるおんせんのゆらい) by 佐々木 邦 (ささきくに) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 14,655 characters · 30 screens
東西引佐の少年はこれ屈竟と雌雄を争う。
「此方は五等で、先方は七等だ」
「去年は此方が八等で先方が六等だったから、丁度好い仇討ちだ」
賞に入らなくとも、目ざす敵に負けなければ宜い。僕の小学校時代に東引佐が一度優勝した。優勝旗を持って西引佐を通って帰るのだから大変だった。
「野郎、来年見ていろ」
と西引佐の小若い衆が目の色を変えてついて来た。此方からも小若い衆が迎いに出た。罷り間違えば血の雨が降る。引率の先生達は随分心配したようだった。
若い者同志は兎角荒っぽい。○○町や山で顔が合う。
「おい。西引佐」
と東引佐が呼びかける時にはもう喧嘩の下心が充分ある。
「何の用だ?」
「他でもない。お前の方の八幡様は贋物だって話だが、矢っ張り御利益があるのかい?」
「野郎、吐かしたな」
「何だって?」
「手前の方こそ代々贋物を拝んで嬉しがってけつかるんだ」
と西の若い者も決して負けていない。
「何方が贋物だ? 昔、おれの方の若い衆がお前の方の八幡様へ忍び込んで、御神体を贋物とすり替えて来たんだ」
「それじゃ泥棒をしたのかい? 東の野郎は手癖が悪い」
「一杯機嫌で行ったんだ。それも御維新前だ。