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うずめられたかがみ

うずめられた鏡

小川 未明

Read うずめられた鏡 (うずめられたかがみ) by 小川 未明 (おがわみめい) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.

N3 · intermediate · modern kanji and kana · 5,962 characters · 12 screens

Aozora Bunko

「どうぞ神さま、用のない鏡は、みんな、くだいてください。そして、ただ一面だけを、私に永久にさずけたまえ。」と、となえながら、身を飛鳥のごとくひるがえして、上へ下へと、おどったのでした。

社のまわりにともる、ろうそくの火が、鏡の面に、ちらちらとうつりかがやきました。

七人の男たちが、胸をいためてまったかいもなく、彼女は、ふと病んで、まだ秋の木の葉がちる前に、あわただしく、この世から去ったのであります。

社の裏手の方へ、用水池がつくられたのは、この後、二百年くらいも、たってからのことでした。そのうち、山の上にわく白雲が、海のほうへ流れていったとき、その姿を、いくたび、この水面にうつしたかしれません。

若い女のうずめられたところは、いつしか、古墳といわれるようになりました。そして、それからまた、幾百年の月日がたったのであります。山や、川や、野原には、かくべつのかわりもなかったけれど、町や村は、その時代によって、ようすがちがい、人も馬も牛も、また幾代かの間に、たびたび生き死にしました。

丹塗りの社も、長い月日の雨風にさらされて、くちたり、こわれたりして、そのたびに、村人によって建てかえられたけれど、まだわずかに、昔の面影だけは、のこっていました。