Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
おごそかなかわき
おごそかな渇き
山本 周五郎
Read おごそかな渇き (おごそかなかわき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 36,042 characters · 71 screens
それがここにあるこの岩の、どうにもならない運命だ。どんなにもがいてもその枠からぬけ出ることはできない。人間にも同じような運命からぬけ出ることができず、その存在を認められることもなく、働き疲れたうえ、誰にも知られずに死んでゆく者が少なくないだろう。
「この世には、ただ一つのものを除いて、永遠につながるものはなにもない」彼はまた呟いた、「――ただ一つのもの以外には」
強い風が吹きつけて来、林の木々や枯草がやかましく揺れ騒いだ。風のその強くなり弱くなるのが、自分の呼吸としだいに合ってゆくように、彼は感じた。そればかりではない、心を澄まして聞き入ると、坂道の土の中でも、林の落葉の下でも、同じように呼吸しているのが感じられ、隆二は一種の深い歓喜と、恐怖に似た昂奮におそわれた。それは説明しようのない、本質的な感動であった。
「自然は生きている」と彼は自分がふるえているのにも気づかずに呟いた。「人間は自然を破壊することができるかもしれないが、征服することはできない、プルトニューム239を創りだし、水素爆弾の投げあいで、地球ぜんたいを破滅させることができるだろう、しかしそれは破壊であって征服ではない」