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おごそかなかわき
おごそかな渇き
山本 周五郎
Read おごそかな渇き (おごそかなかわき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 36,042 characters · 71 screens
と竹中啓吉が云った、「おまえさんは禅宗だそうだが、いったい禅宗とはどういうもんだね」
「禅宗は禅宗さ」
「真宗も真宗さ、おんなじ釈迦の説教から出たのに、この土地ではお互いがかたきどうしのように、いがみあっている、宗旨をもつのがいいなら、そんなことはねえんじゃあねえのかい」
「その濁った酒のほうでいいからな、福」と油屋の親方はめし茶碗を差出した、「一杯ついでくれ」
竹中の話し相手だった福さんは、待っていたようにびんぼう徳利から酒をついでやった。
「しゃれたようなことを聞いたが」と親方は酒をぐいと飲んでから云った、「おめえはよそ者だからわからねえかしれねえが、宗旨の違えで隣りづきあいもしねえってのはな、大根が大根であり、人蔘が人蔘だっていうこった、いいか、大根は大根、人蔘は、それ人蔘だろうが、宗旨の違えもそのとおり、禅宗は禅宗、真宗は真宗よ、おめえはしょっちゅういがみあっているように思ってるらしい、そうかもしれねえが、宗旨の違いがあればこそ、あいつは真宗きちげえの誰それだとか、あれは禅寺によく奉公してる誰それだかってことがわかる、それがおめえ無宗旨だとしたら、どうだえ、まるっきり見分けがつくめえじゃあねえか」