Japanese reading practice

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おごそかなかわき

おごそかな渇き

山本 周五郎

Read おごそかな渇き (おごそかなかわき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 36,042 characters · 71 screens

Aozora Bunko

――少女とは思えないゆたかな太腿も、当人はべつに恥ずかしさも感じないらしく、ゆたかな両腿を水だらけにし、冷たい水をはね返しながら、ついに一尾の大きな魚を掴みあげて、歓声をあげた。

「これなんの魚かしら」りつ子は三十センチあまりの、ぴちぴちはねる魚を持って、川からあがって来た、「――あら、やっぱりそうだわ、これ岩魚よ」

「いまじぶん岩魚がいるのかい」

「岩の下で休んでるの、涸沢でも幾たびか捕ったことがあるわ」

隆二はりつ子の太腿から、眩しそうに眼をそらした。

「岩魚は夏のものじゃあないのか」

「冬のあいだは休んでるのよ、だから、岩の下をさぐると捉まえやすいの、その代りいまは痩せていておいしくはないのよ」

火をもっと強くしよう、と隆二が云い、りつ子はまた川の中でばしゃばしゃ始めた。そしてたちまち、七尾の魚を掴みあげた。岩魚もあり鮠も山女もあった。みな九センチ以上の大きさで、河原に投げあげられると、それらは勢いよくはねながら、水苔の匂いをあたりにふりまくようであった。

隆二は枯れた木や枝を集めて来、焚火にくべながら――まだ川にはこれほど魚がいるんだ、自然はまだ生きている。