Japanese reading practice

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おばなさわ

おばな沢

山本 周五郎

Read おばな沢 (おばなさわ) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 22,479 characters · 45 screens

Aozora Bunko

「――卑しいって、なにが卑しいんですの」

「いま云ったなになに病気とかいうやつさ、そんな品の下ったことを云うと嗤われるぞ、おまえは案外なばかだ」

節子はむっとした。なぜそれが品の下った卑しいことなのか、意味を知らない彼女には兄の云いかたのほうが不愉快で、

「――もうようございます、お兄さまの気持はよくわかっていますわ、戸田へお嫁にゆくときまってから、節子はばかなんですから」

「まったくだ、おまえは底が抜けてるよ」

泰馬は憎らしそうに云って立っていった。

――どうしてあんなに、戸田をお嫌いなさるのかしら、そんなにも相良さまがお好きなのかしら、自分が結婚するわけでもないのに、もうさっぱりして下すってもいいころだわ。

節子も昂奮して、暫く心がおちつかなかった。

兄が英之助を嫌いだしたのは、節子との縁談がきまる前後からのことで、そのまえにはそんなことはなかった。もともと兄と戸田と相良とは藩の学寮からの友達で、少年じぶんから親しく往来し、かれら二人が訪ねて来ない日はないくらいだった。

節子もその仲間にはいって、家で遊んだり、野山や川へ伴れていって貰ったりしたものだが、その当時から相良よりも戸田のほうが好きであった。