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おかあさんのひきがえる
お母さんのひきがえる
小川 未明
Read お母さんのひきがえる (おかあさんのひきがえる) by 小川 未明 (おがわみめい) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.
N3 · intermediate · modern kanji and kana · 1,299 characters · 3 screens
」といって、のこのこと坂を下りて、町へやってきたのでした。
かえるの足は、のろかったから、町へきた時分は、もう、かれこれ晩方になっていました。
「まあ、一軒、一軒、歩いてみることにしよう。」と、大きなかえるは思いました。
人間というものは、みんなやさしいものだと思っていたかえるは、なにもほかのことを考えませんでした。すぐ、その一軒の入り口からはいりました。
その家は、米屋でありました。米屋のおじいさんは、なにか、黒い、大きなものがはいってきたと思って、よく見ますと、それは、ひきがえるでありましたから、
「まあ、まあ、こんなところへはいってきては困るじゃないか。さあ、出ておいで。」といって、おじいさんは、笑いながら、かえるを棒の先で、往来へ出してしまいました。
お母さんのひきがえるは、かくべつそれを悲しいとも思いませんでした。こんどは、隣の家へはいってゆきました。
隣の家は、炭屋でした。おかみさんが、冬の用意に、たどんを造っていましたが、ひきがえるがはいってくると、
「こんなところへはいってくると、真っ黒になってしまうよ。さあ、あっちへおゆき。」といって、そこにあったほうきで、かえるを往来の方へはき出すまねをしました。