Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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おみつかんざし

お美津簪

山本 周五郎

Read お美津簪 (おみつかんざし) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,158 characters · 26 screens

Aozora Bunko

然し、その秋から断行された町奉行の、放火盗賊お改めの厳しさは、彼等の仲間にもひどく祟って、二両などと云う金の都合のつく者は一人もなかった。

「どうしよう、――明日の船に乗り後れれば、あとは正月十五日過ぎでなければ船は無いのだ。この体ではそれまで保つかどうか分らない、どんな事をしても帰り度いが――ああ、どうしたらいいんだ」

空しく歩き廻った疲れと寒さで、身の凍えきった正吉は、ふと通りかかった居酒屋の暖簾をくぐる気になった。――店はがらんとして人気もなく、亭主らしい肥えた男が、鋭く光る眼でぎろりと正吉を見た。

「酒をつけてくれ」

「――どの口に致しましょう」

「その……」

正吉はふところの銭をそらで数えた。

「その梅でいいや」

「お肴は?」

「――いらねえよ、寒さ凌ぎなんだ」

亭主は無愛想に酒の燗をつけて来た。――正吉はそこに出ているつまみ物にも手を出さず、呷りつけるようにぐいぐいと呑んだ。そして二本めにかかった時、さっきからじっと正吉の様子を見ていた亭主が、身を乗出すようにして云った。

「間違ったら御免なさい、――おまえさん生れは九州の方じゃあありませんかい」

「へえ――よく分るな、おらあ長崎だが」