Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

からっぽのたんす

からっぽの箪笥

山本 周五郎

Read からっぽの箪笥 (からっぽのたんす) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 1,708 characters · 4 screens

Aozora Bunko

紳士は憤然として去り、始終を見ていた若い記者諸君はかすとりを啜りながら、暫らくその紳士の評を肴に酔をたかめるのであった。これら新興社はすでに亡び去ったし、それらの社にいた誇り高き紳士諸君も、いまはそれぞれ正業についておられるであろうが――そういうわけで、私はインフレ原稿料というものを、ついに一度も手にしたことがないうえに、或るときなど持って来た記者の出しかたが気に障ったので、かなり多額な(私としては)稿料を灰皿で燃してしまったことさえもあった。しかも酒浸りという状態だから、家計がどんなありさまであるかは想像するまでもないだろうのに、家人からなにも文句が出ないのを「これでいいのだろう」と暢気に構えていた。そして或るとき、私は家人の箪笥をあけてみて、自分の躯が唐竹割りにされたようなショックを受けた。彼女の母親から譲られたその古風な箪笥は、五つある抽出の全部がからっぽになっていたのである。私はたとえそれが妻であっても、女性の持物には触れたことがない。まして箪笥の中など覗いたためしはないので、どんな品がどれだけ入っていたかは知らない。けれどもおよそこのくらいという見当だけはつく。