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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
Read ぐうたら道中記 (ぐうたらどうちゅうき) by 佐々木 邦 (ささきくに) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 164,113 characters · 332 screens
「此方が振袖石、振袖の形をしている。彼方のが蛸石。そら、下の隅のところに蛸の形の斑点が出ているだろう?」
と小川さんが説明する。
「成程、振袖石が高さ二間半余横七間半、蛸石が高さ四間半横六間とある」
とお父さんは立札を読んで、
「昔の軍人も案外話せるね。蛸石というと何となく飄逸だ。振袖石なんて如何にも優長な名前じゃないか?」
「淀君がつけたんだろうぜ。ちょいと旦那、この石は振袖に似ているわね。あゝ私、何うしても朝鮮人参を飲んでもう一遍振袖を着る年に若返りたいわ。朝鮮征伐をしてよう。ようってば、よう、旦那……てな次第でね」
「旦那じゃなかろう」
「それなら閣下か。あら、閣下、何んていけ好かないんでしょうね。この石の斑点は坊主でしょうか? あら、蛸だわ! ねえ、ちょいと、閣下ってば……かね?」
「閣下じゃない」
「殿下か? 太閤は。ちょいと殿下……」
と言いかけた刹那、ズドーンという大物音。
「……えっ、吃驚した。午砲だよ/\」
お城から天神橋まで歩いて、橋の中途から中之島公園へ下りた。此処は有り合せの地面を利用したのでなく、川の中流を埋めて拵えたのだから、広くなくても贅沢は言えないのだそうだ。