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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
Read ぐうたら道中記 (ぐうたらどうちゅうき) by 佐々木 邦 (ささきくに) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 164,113 characters · 332 screens
横物なら大抵四字だから何うにか斯うにか書けるよ。尤も何う読みますかと訊かれると辟易するが、そこは御方便なもので、居合せた奴が必ず何とか読んで呉れる」
「豪い書家があったもんだ」
「支那へ出張した時には鞭声粛々をすっかり書いてやった。あれは書生の頃剣舞で覚えたんだが、一体誰の詩だい?」
「頼山陽さ」
「道理で支那人共大いに敬服したぜ。ところが漢口では大いに信用を堕したよ。主人公が頻りに首を傾げているから通訳に訊いて見ると、この間来た日本の大官もこの詩を書いて行ったというのさ。悪いことは出来ないもんだね。尚その通訳の話によると日本人は支那で揮毫を頼まれると大抵鞭声粛々で間に合わせるから何か他のものを仕込んで行かなければ駄目だそうだ」
ところへ仙夢さんがこの家の主人世古六太夫さんを案内して来て、少時の間沼津物語に花が咲いた。九太夫や三太夫の身内らしい旧弊な名前だけれど、六太夫さんは髪を綺麗に分けて縁無し眼鏡を掛けた少壮の文明紳士で、丁髷の跡は蛙の尻尾ほども残っていない。この人の説明によると旧幕の頃には三島とか沼津とかという宿には本陣といって、大名の泊る宿屋が必ず二軒あったそうだ。