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これからけっこんするひとのこころもち
これから結婚する人の心持
宮本 百合子
Read これから結婚する人の心持 (これからけっこんするひとのこころもち) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 5,834 characters · 12 screens
その場合、女のひとの感情は、何となし型にはまって、昔ながらの受け身な風で、涙を抑えながら出発を見送って旗を振る、というようなおさめかたであったように思う。
男の側から気持をそういう方向にもってゆく場合が目立ってとらえられていたというのも、云って見れば、暗黙のうちに女のひとの心の中に生じていた結婚に対する遅疑や逡巡が照りかえしたものとしての現れであると云えるところもあろう。時局に際しての女の身の上相談として、実際に、どうしたらよかろうという問いがそういう立場にある女のひとから出ていたのだから。
一応そういう躊躇のもたれるのも無理ないところがある。日本の習慣の中で、結婚は決して若い男と女との愛情だけで解決するのではなくて、必ず家と家とのいきさつになり、双方の両親が多くの発言をもち、娘の良人としての男とは比較にならない程、若い妻には嫁としての負担が加わって来る。ましてや男の側の両親がその結婚に賛成していないとか、女の両親が娘の連れ合として認めていないとか云うことになれば、細々とした日常で女のうける苦痛は絶間ないであろう。そういう心配はないとして、結婚のその夜召集が来たというような実例は、目前に自分たちのこととして思うとき男にも女にも考えさせるものを持っているには違いない。