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さぶ
さぶ
山本 周五郎
Read さぶ by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 210,521 characters · 415 screens
「どうしよう」と彼は呟いた、「そんなこととはまったく知らなかった」
おれがやればみんなもやるという、みんなを巻き添えにすることはできない。義一を外へ呼出そうか、みんなのいないところで、義一と対でやってみようかとも思った。
「それでは勝ちみはないな、足がこんなでは不意を覘うほかに勝ちみはない」栄二はそう呟いて太息をついた、「――やっぱり岡安さんに話すよりしようがないな、もし岡安さんに事情があって、役所でも手が出せないとなったら、そのときまた考えてもいいじゃないか、ともかくそれが先だ」
岡安喜兵衛には話したくなかった。これまで手を出さずにいるのは、やむを得ない事情があるに相違ないからだ。しかし事がこんなふうになり、部屋のなかまたちにまで危険が及ぶとすれば、自分の一存でやるわけにはいかない。話すだけでも岡安喜兵衛に話してみよう、と栄二は決心した。――そこを歩み去るまえに、彼は振り向いて海のほうを見た。風は殆んど凪いで、ときどき石垣を洗う波の音も、やわらかに囁くように聞えた。星空の下の海は暗いが、夜釣りをする舟の灯がまたたいてい、空気にはあたためられた潮の香が匂った。