Japanese reading practice

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しじみがし

しじみ河岸

山本 周五郎

Read しじみ河岸 (しじみがし) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 25,438 characters · 51 screens

Aozora Bunko

そのときも少年はまだつきまとっていたが、それは(源兵衛の話で)やはりお絹の弟の直次郎だということがわかった。

源兵衛は五十一二歳の、躯の小さな、固肥りの毛深い男だった。濃い眉の下の細い眼がするどく、態度は卑屈で、絶えずぺこぺこと頭を下げる。こんな人間が店子などにはてきびしいのだろう、律之助はそう思ったが、じっさい長屋の者たちのようすには、それがよくあらわれていた。

「なんでございますか、その」と源兵衛は別れ際に云った、「あの件でなにかまだ、その、御不審なことでも、――」

「うん、ほんのちょっとしたことだが」と彼はさりげなく云った、「一つ二つ納得のいかないところがあるんでね、たいしたことじゃないが」

「すると、旦那が御自分で、お調べなさるんですか」

「そのつもりだ」と彼は答えた。

「それはどうでしょうかな」源兵衛は横眼ですばやく彼を見、躊うように云った、「こんなことを申してはなんですが、この辺のにんきの悪いことはもうお話のほかでして、土地に馴れたお手先衆でも、うっかりすると暗がりから棒をみまわれるくらいですから」

「そうらしいな」

「よけいなことを申上げるようですが、馴れた方にでもお命じなすったほうが御無事かと存じますが」