Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しじみがし
しじみ河岸
山本 周五郎
Read しじみ河岸 (しじみがし) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 25,438 characters · 51 screens
帯刀は好意のある眼で律之助を見た、「私も花房さんはよく知っています、いろいろ教えてもらったりお世話になったりしたものです、まだお若かったのに残念でしたね」
律之助は簡単に自分の頼みを述べた。
「いいでしょう」と帯刀は云った、「ゆうべ高木からあらまし聞いて話したんですが、もしこんどの勘が当って、吟味がひっくり返りでもすると、――もちろんその自信があるわけだろうが、新任のあんたにとっては兜首ですよ」
律之助は黙っていた。
――私はそんなものが欲しいんじゃありません、まるでべつのことのためにやるんです。
彼は心の中でそう呟いたが、口には出さなかった。
帯刀は志村吉兵衛という同心を呼び、律之助をひきあわせて、必要なことに便宜をはかれと命じた。もう話ができていたのであろう、吉兵衛はすぐに、「どうぞ」と云って案内に立った。
「私はさきに帰るよ」高木が云った、「役所のほうはうまくやっておくが、できたら日にいちど顔だけは出してくれ」
律之助はそうすると答えた。
案内されたのは詮索所であった。それは二間四方の部屋で、左右がどっしりと重い栗色になった杉戸、うしろが襖で、前に縁側があり、その下が白洲になっている。