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しんぱくのはなし

しんぱくの話

小川 未明

Read しんぱくの話 (しんぱくのはなし) by 小川 未明 (おがわみめい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 3,076 characters · 7 screens

Aozora Bunko

星の光は急に、遠くなって、また銀河の色は、見えるか見えぬほどのかすかさです。

「自分の生活は、変わってしまったのだ。あの岩から引き離されたときは、枯れると思ったのがこうして生きるばかりでなく、あのあらしから、吹雪から、もう、まったく安心なのだ。なんという人間は、神以上の力を持っていることだろう。」

しんぱくは、人間を偉いと思いました。ここへくる人たちは、だれでも、この鉢植えの前に足をとめて、感心して、ながめました。

「いい、しんぱくですな。」

木は、みんなが、自分をほめてくれるのでうれしく思いました。いわつばめや、こうもりなどに、愛されるよりは、人間にほめられるほうが、うれしいような気がしたのです。

「命がけで、自分を山からつれてきて、かわいがってくれるのだからな。」

こう、木は思うと、また、いつか雲が、

「山に育って、下界へいったものは、みんな死んでしまう。だから、霧と、あらしと、雪の中の暮らしを恨んではならない。なんといっても、それが貴くて、輝かしいのだから。」といったことが、愚かしく感じられました。

ある日、りっぱな紳士が令嬢をつれて、この庭園へはいってきました。