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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
Read 『たぬき汁』以後 (あわもりものがたり) by 佐藤 垢石 (さとうこうせき) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 118,470 characters · 244 screens
美声が、ころころと喉から転びだす。一同、ぱちぱちと拍手喝采。おかげさまで、ますますお腹がへってきた。
六
献立表に書いてある前菜の四冷葷が炊白鶏を第一として歯鮑片、五番且、三絲※(「折/虫」、第4水準2-87-49)と次々に運ばれ、続いて髪菜、広肚、紅焼、魚翅、※(「火+畏」、第3水準1-87-57)五などが卓上に現われる。それが、一巡してから大皿に盛り出されたのが、「香熊」と銘うつ待ちに待った羆である。
われわれは、献立表に書いてある「香熊」というのを、実は熊掌料理であるまいかと期待していたのだ。熊掌料理は支那の料理書によると豹胎、鯉尾、龍肝、鳳髓鶚炙、酥酪蝉、狸唇の七種を加えて周の八珍と称しているが、その料理法について木下謙次郎は、まず熊掌を温水でよく洗い、次に熱湯で湯がいて表皮を剥ぎ、これを流水にさらすこと三昼夜。かくして磁器のうちに入れ、酒を醋に和して昼夜間断なく蒸熱すること、少なくとも五昼夜に及ぶ。そこで臭気が全然去り、かつやわらかになったならば骨を抜きとり肉を薄くきり、鶏汁、酒、酢、薑、蒜などを加え、数時間煮燗して最後に塩と醤油で味をつける。