Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

だだらだんべえ

だだら団兵衛

山本 周五郎

Read だだら団兵衛 (だだらだんべえ) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,271 characters · 25 screens

Aozora Bunko

三月三日の夜――。宴終って後、八郎太は三四人の連と外へ出たが、五番町のあたりまで来た時、ふと忘物をしたことに気がついたので、そこから一人で立戻った。急いで戻って来る、別荘の横手、ひょいと生垣を乗越えて邸の中から忍び出て来たやつがある。

「誰だ!」

と叫ぶと、ぱっと身を飜して逃去ったが、覆面の間にちらりと見た顔は、たしかに半年ほど前、不行跡のことあって藩を追われた垣内彦六という者である。

何かあったな!

と思ったので、庭先から入り、主人の居間の縁先へ駈けつけると、明け放した障子の中に主馬が倒れている。

驚いて駈上り、抱起して、

「梁川氏!」

と呼ぶと、顔をあげた主馬が、忿怒の形相凄じく、呻くように、

「ううぬ、八郎太!」

と云った。不意討にやられたので、いま見る八郎太を相手と思誤ったらしい。驚いた八郎太が、

「違う、私は今ここへ――」

云いかけるのを構わず、必死になって、

「たた誰か参れ、八郎太が」

ともがく。

傍に血まみれの刀が落ちているから、つと手を伸ばして見ると主馬の差料だ。油断を狙って主馬の刀で斬ったものに違いない。

主馬はあくまで下手人は自分と誤り信じている、せめて刀が殺害者の物ででもあったら、自分の潔白を証拠だてる万一のよすがともなったろうに。