Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ちいさこべ

ちいさこべ

山本 周五郎

Read ちいさこべ by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 33,480 characters · 67 screens

Aozora Bunko

「それで」と茂次がじれったそうに促した。

「それでつまり、一人や二人ならいいけれども、十二三人にもなっちまってるんで」

「だめだ」と茂次は首を振った、「そんなばかなことができるもんか、追いだしちまえ」

大六は困惑したようすで、それがそうはいかない、娘が理屈を云って、どうしても承知しないのだと云った。

「あいつは昔からおせっかいなやつだった」と茂次が云った、「よし、うっちゃっとけ、おれが帰ったら片づけてやる」

波津音の普請は十月はじめに終った。

このあいだに二人、高輪の「大伊」と浅草あべ川町の兼六が川越まで弔問に来た。大伊の伊吉は亡き留造の弟分で、茂次は小さいじぶんから「高輪のおじさん」と呼んでいた。兼六は「大留」から出た人間で、弟子筋ではいちばん古参であり、年ももう六十にちかかった。二人とも留造夫婦の死にくやみを述べ、茂次が仕事場からはなれなかったことを褒めた。それから、葬式のことや、大留の再建について相談にのろうと云った。茂次はふだんから口がへたで、なにか云うにしても、まるで枯枝でも折るような、ぶっきらぼうなことしか云えなかったが、そのときもいつもの伝で、弔問には礼を述べたが、相談にのろうというはなしは断わった。