Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ちくしょうだに
ちくしょう谷
山本 周五郎
Read ちくしょう谷 (ちくしょうだに) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 69,788 characters · 138 screens
岩ばかりのそんな高いところでは、寄って来る鳥もなかった。――土運びが続いているためか、柵へ近づく女たちも稀になったので、夜の立番はやめてしまった。ときたま夜が更けてから、梟の鳴きまねの聞えることもあるが、もう寒さがきびしいので、いつまでも立ってはいられないのだろう、長くても半刻くらいすれば帰ってゆくようであった。夜ながになればと待っていたが、音曲のほうは同じことで、聞き手は殖えもせず、興味をもつようすもないので、演奏者のほうが飽きてしまい、乾藤吉郎などは故障を申立てて、休むことばかり考えるようになった。
十月三日に初雪が降った。
正内老人が「今年は雪が早そうだ」と云うので、隼人は五日に「月便」を出した。それが今年最後の月便で、盗伐で捕えた二人も伴れてゆかせた。二人は傷が痛くて歩けないと云ったが、隼人は相手にならず、棒で叩いても歩かせてゆけと命じた。宰領は岡村七郎兵衛と松木久之助で、松木は二度めであるし、岡村は延びていた番明きで、そのまま城下へ帰るのであった。
「もし必要なら」と支度ができてから、岡村が隼人に云った、「――というのは、もしお役に立つならという意味ですが、もう少し残っていてもいいですよ」