Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ちくしょうだに
ちくしょう谷
山本 周五郎
Read ちくしょう谷 (ちくしょうだに) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 69,788 characters · 138 screens
隼人は自分の手をうち返し眺めていた。
「もちろんいそぎはしない」帯刀はまた怒ったような調子になった、「隼人は小一郎が十五歳になるまで結婚はしないと云ったそうだ、本心からそうするつもりかもしれないが、それは不自然でもあるし無理なことだ、またきいのほうも二十六歳で、これはむろんよそへ再婚するというわけにはいかない、――なにを笑うんだ」
「笑やあしない」隼人は静かに眼をあげた、「いずれその話は出るだろうと思っていた、世間ではよくそんなふうに纒まるようだからな、ああ、考えておくよ」
「あれが嫌いなら話はべつだぞ」
「嫌いなことはない」と隼人は答えた、「小さいじぶんからよく知っているし、兄と婚約がきまったときはがっかりしたくらいだ、――しかし、まあいい、考えておくよ」
その翌日、隼人は登城して家老に会い、江戸から使者があったこと、彼に木戸の番頭を命ずるという沙汰であること、などを告げられた。家老の樋口門左衛門がそれを伝え、隼人はお受けをした。そこには年寄役の林兵右衛門、中立庄太夫、また中老の与田滝三郎らが列席してい、与田が隼人に質問した。
「そのほうは自分からこの役を願い出たということだが、それは事実か」