Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ひどいけむり
ひどい煙
久生 十蘭
Read ひどい煙 (ひどいけむり) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 9,064 characters · 18 screens
朝あけから、床几に縛りつけて、射場の地取りを見せておいたが、貴様には、この謎がとけなかったそうな」
「とても、そこまでのことは……しかしながら、玉の出ぬ大筒は射てぬはず。これは、近頃もって難題にございますな」
和流砲術の装薬の定め方は、玉目百匁について、火薬四十匁の割になっているが、相手は諸元を狂わせた得態の知れぬ大物で、装薬の割が一匁ちがっても、砲身といっしょにすっ飛ばされる恐れがある。喜太夫としても、そこまで危険をおかす気はないから、そういって逃げにかかったが、外記はゆるさず、
「玉が出ぬとは、なにによって詮じつけた。玉割はどうだろうと、持矢倉を測って射ちあげるくらい、なにほどのことがあろうか。貴様が否なら、伜の喜三郎にやらせる。そのかわり、嚮後、砲術に関するかぎり、一切、大きな口をきくな。火薬箪笥を抱えて、土蔵のなかにひっこんでいるがよかろう」
と憎体に罵った。
田付四郎兵衛は、浅黄木綿の袴の膝に手を置き、温和な微笑をうかべながら、二人の争論を聞いているばかりで、頼みにならない。喜太夫は、そのとき勃然たる怒りを感じ、いつになく、手強く言い返した。