Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
まかないのぼう
まかないの棒
黒島 伝治
Read まかないの棒 (まかないのぼう) by 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 4,538 characters · 10 screens
始終、耳がじいんと鳴り、頭が変にもや/\した。
タバコ(休憩時間のこと)には耳鳴りは一層ひどくなった。他の労働者達は焚き火にあたりながら冗談を云ったり、悪戯をしたりして、笑いころげていたが、京一だけは彼等の群から離れて、埃や、醤油粕の腐れなどを積上げた片隅でボンヤリ時間を過した。そのあたりからは、植物性の物質が腐敗して発する吐き出したいような臭気が立ち上ってきた。最初、彼は、堪えられなかったものだが、日を経るうちに、馴れてきて、さほどに感じなくなった。それに従って、彼の身体には、知らず知らず醤油の臭いがしみこんできているのだった。
「あ、臭い! われ(お前の意)が戻ると醤油臭い。」
たまに、家へ帰ると祖母は鼻を鳴らしてこう云った。
「なに、臭いもんか。」
「臭のうてか。われ自分でわからんのじゃ。」
山仕事から帰った父母は、うまそうに芋を食っていた。
京一は、山の仕事を思った。鋸で立っている樹を伐り倒すということは面白味のあることだった。霰の降るような日にでも山で働いていると汗が出た。麦飯の弁当がこの上なくうまかった。
槽を使うのは、醤油屋の仕事に慣れた髯面の古江という男がやった。