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みさごのすし
みさごの鮨
泉 鏡花
Read みさごの鮨 (みさごのすし) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 23,198 characters · 47 screens
「厭な事だ。」
「大層嫌うな。……その執拗い、嫉妬深いのに、口説かれたらお前はどうする。」
「横びんた撲りこくるだ。」
「これは驚いた。」
「北国一だ。山代の巴板額だよ。四斗八升の米俵、両手で二俵提げるだよ。」
「偉い!……その勢で、小春の味方をしておやり。」
「ああ、すべいよ、旦那さんが言わっしゃるなら。……」
「わざと……いささかだけれど御祝儀だ。」
肩を振って、拗ねたように、
「要らねえよ。――私こんなもの。……旦那さん。――旅行さきで無駄な銭を遣わねえがいいだ。そして……」
と顔を向け直すと、ちょっと上まぶたで客を視て、
「旦那さん、いつ帰るかね。」
「いや、深切は難有いが、いま来たばかりのものに、いつ出程かは少し酷かろう。」
「それでも、先刻来た時に、一晩泊だと言ったでねえかね。」
「まったくだ、明日は山中へ行くつもりだ。忙しい観光団さ。」
「緩り居なされば可いに――では、またじきに来なさいよ。」
と、真顔で言った。
客はその言に感じたように、
「勿論来ようが、その時、姐さんは居なかろう。」
「あれ、何でえ?……」
「お嫁に行くから。」
したたか頭を掉って、
「ううむ、行かねえ。