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みさごのすし
みさごの鮨
泉 鏡花
Read みさごの鮨 (みさごのすし) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 23,198 characters · 47 screens
ために景色が穏かで、空も優しい。真綿のように処々白い雲を刷いたおっとりとした青空で、やや斜な陽が、どことなく立渡る初冬の霧に包まれて、ほんのりと輝いて、光は弱いが、まともに照らされては、のぼせるほどの暖かさ。が、陰の袖は、そぞろに冷い。
その近山の裾は半ば陰ったが、病院とは向う合せに、この畷から少し低く、下りめになって、陽の一杯に当る枯草の路が、ちょろちょろとついて、その径と、畷の交叉点がゆるく三角になって、十坪ばかりの畑が一枚。見霽の野山の中に一つある。一方が広々とした刈田との境に、垣根もあったらしいが、竹も塀もこわれごわれで、朽ちた杭ばかり一本、せめて案山子にでも化けたそうに灰色に残って、尾花が、ぼうと消えそうに、しかし陽を満々と吸って、あ、あ、長閑な欠伸でも出そうに、その杭に凭れている。藁が散り、木の葉が乱れた畑には、ここらあたり盛に植える、杓子菜と云って、株の白い処が似ているから、蓮華菜とも言うのを、もう散々に引棄てたあとへ、陽気が暖だから、乾いた土の、ほかほかともりあがった処へ、細く青く芽をふいた。
畑の裾は、町裏の、ごみごみした町家、農家が入乱れて、樹立がくれに、小流を包んで、ずっと遠く続いたのは、山中道で、そこは雲の加減で、陽が薄赤く颯と射す。