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やぶからし
やぶからし
山本 周五郎
Read やぶからし by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 22,476 characters · 44 screens
末の信五というお子が五歳になるので、血の続きも濃いし、貰って下さればわたくしがお育てするから、と云ったのであるが、するとおかあさまは、それよりあなたに婿の話があるのだ、と仰しゃった。
「いいえ、いやです」わたくしは驚いてかぶりを振った、「わたくし、それだけは、はっきりお断わり致します」
おかあさまは眼をみはり、それから不審そうなお顔つきで、じっとわたくしをごらんになった。わたくしの口ぶりがあまりに激しかったので、なにかわけがある、とお思いになったのであろう。わたくしももうお話してもいいと思い、祝言の夜の仔細を申上げ、二度とあんなことを経験したくない、という気持を正直にうちあけた。
おかあさまにはまったく思いがけないことだったようで、暫くは眼をつむったまま、なにも云うことができない、というふうにみえた。
「そうだったの」とやがておかあさまは深い溜息をついて仰しゃった、「ではあなたはまだ娘のままだったのね、ああよかった」
「娘のままではございませんわ、玄二郎さまと祝言をしたのですし」
「いいえ」おかあさまは遮って、そっと微笑された、「そのことはあとで、よくわかるように話してあげましょう、あなたのいまのお話が本当なら、あなたはまだ娘のままだし、良人を持つということはそんなものではないんですよ、でも」