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ゆだんたいてき

ゆだん大敵

山本 周五郎

Read ゆだん大敵 (ゆだんたいてき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 20,664 characters · 41 screens

Aozora Bunko

殆んど肱までしかない筒袖の木綿の単衣に、膝下二寸あるかなしの葛布の短袴である。それが夏冬とおしての着衣だった。

それから箱膳と盥と、針箱とを各自に与えられた、箱膳はわかるが、盥と針箱を一つ宛あてがわれたのには、五人ともめんくらった。後にわかったのだが、毎日必ず着衣の洗濯をし、綻びも自分で縫いつづくるのだ。

……しかしめんくらったといえば寧ろそれからの日々であろう、朝は三時に起きる、折から厳冬の、ものみな凍る時刻に、井戸端へ出て久之助から先に素裸で水を浴びる、それから道場の内外の掃除だが、はじめの計画では三十人は収容するつもりの建物なので、いかに努力してやっても三時間はかかった。

しかも毎日天床から梁長押の隅まで残る隈なくやる、ちょっとでも手を抜くとなんべんでも遣り直しだ、殊に道場の板敷を拭くのがたいへんで、広さは五間に八間であるが板が新しいから、斑なく拭き込むのは容易なことではなかった。

次ぎに毎日一人の当番をきめて火桶へ火を入れる、これは楢の丸炭の三寸ばかしに切ったのを三個立て、それを灰で囲って上に小さな火種をのせておこす、その三本の炭を一日もたせるのが原則である。