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アラスカのひょうが
アラスカの氷河
中谷 宇吉郎
Read アラスカの氷河 (アラスカのひょうが) by 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 2,988 characters · 6 screens
これはアルプスの氷河などでも、よく知られている。二つの渓谷が、一本になるところでは、各々の渓谷から出た氷河が、一本に合流する。こういう場合は、合流点からずっと下流のところまで、右側の渓から出た氷河と、左側のものとが、はっきり区別される。その境ははっきりしていて、両方の氷河がまざることがない。一方の渓の氷河に、とくに堆石が多い場合は、合流点の下流では、氷河の半分が黒く、半分が白くなる。アルプスには、そのよい例がある。
マラスピーナの場合は、末端に近いところへきて、急に幅が六十キロ以上にも拡がる。それで氷河はここで、水飴を板の上に落としたような形に拡がっている。その流線の形は、堆石の線条によって示されるが、無数の線条は、うねうねと曲がって流れている。その特徴は、各線条が常にならんでいて、決して互いに交錯しない点にある。その形は、墨流しの模様に、そっくりである。
この線条の模様が見られる機会は、非常に少ない。夏は濃霧にとざされていることが多く、秋になると、早々に雪がきて、全体が白一色の世界になってしまう。幸い昨年の九月の末、氷島からの帰途、好晴にめぐまれて、初めてこの天工の墨流しを見ることができた。