Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
オフェリヤごろし
オフェリヤ殺し
小栗 虫太郎
Read オフェリヤ殺し (オフェリヤごろし) by 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 29,366 characters · 58 screens
所が、その時衣摺れのような音が――たしか天井の、それも簀子の方へ行く、階段の口あたりでしたと思われたのです。と云って、その前後には、何も床板を蹈むような音はしなかったのですから、私は不審に思い行ってみました。すると、そこにあるのは、脱ぎ捨てられた、亡霊の衣裳では御座いませんか。そして、簀子の上の方で、チラチラ動いている影が、眼に映りました。けれども、私はもうその上追う事が出来なくなりました。と云うのは側の時計を見ますと、それが恰度九時になっていたからです。いいえ法水さん、たしかに父は、いまこの劇場の、何処かにいるに違い御座いませんわ。ところが私達は、どれもこれも卑怯者ばかりなんですの。父の一生を台なしにして、あの無残な破滅に突き落してしまった……」
幡江は膝頭をわなわなと顫わせ、辛ろうじて立っているように思われた。
所で、彼女がいま、九時と云う時刻を口にしたのだったが、その理由を云うと、道具建ての関係で時間が遅れた場合には、続く二場を飛び越えて、次を、オフェリヤ狂乱の場とする定めになっていたからである。
しかし、不思議な事には、検事の時計も、熊城のも、指針がまだ九時には達していなかった。