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ガラスまどのこうほね
ガラス窓の河骨
小川 未明
Read ガラス窓の河骨 (ガラスまどのこうほね) by 小川 未明 (おがわみめい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 3,383 characters · 7 screens
」と、河骨は、思ったのであります。
「私、草花の種をまいたりするのは、大好きなのですけれど、もう、そんな暇なんかないのです。」と、一人が、いいますと、
「ほんとうに、朝出て、晩にならなければ、帰らないのですもの……。」と、一人は、答えました。
二人は、花屋の前で、しばらく花を見て、目を楽しませると、窓の際から離れ、肩を並べて、ふたたび自動車に乗って働くために立ち去ったのです。
都会の生活に経験のない河骨は、どうして、この娘たちのことを知り得ましょう。娘たちが去ると、河骨は、自分の不幸をなげいたのでした。
しかし、このやさしい娘たちは、けっして、河骨をば忘れたのではありません。一人の娘は、狭苦しい自動車の内で、客にもまれて、切符をはさむ間も、花屋の店さきにあった、水草の黄色な花を心の目に思い浮かべていました。そして、一日の仕事に疲れた魂をわずかになぐさめていたのであります。
河骨の花は、このままそこで、しおれてしまうより、ほかなかったのでした。
「街の人は、だれも、私をかえりみてくれない。私はそんなにいなかびているのだろうか?」
もはや、一日ましに、暑くなる時節であって、街の上の空は、銀色にうるんでいました。