Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Read キャラコさん by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 32,972 characters · 66 screens
イヴォンヌさんが、ささやく。
「はずかしくて、出て来られないのよ」
けさの射撃会のことで、腹を立てているにちがいない。キャラコさんは、なんだか気がとがめてしようがない。ピエールさんのほうを見ると、ピエールさんは、すまして食事にとりかかろうとしている。
(行ってあげればいいのに)
キャラコさんは、ひとりで気をもむ。
(きっと、ひとりで、さびしがっているのにちがいないわ)
しかし、そんな出すぎたことはいわれない。自分が見舞いにゆくのはわけはないが、そんなことをしたら、いっそう、かんしゃくをつのらせるばかりだ。もだもだしているうちに、食事が始まる。
朱肉色の生雲丹のあとで、苦蓬をいれたジェリィの鳥肉が出てくる。それから、凍甜菜。
料理にあわせて、バニュウルとか、ボオジョレー酒とか、モルゴンなどという白や赤の葡萄酒がつがれる。料理も酒も凝りぬいたものばかりである。
キャラコさんは、べつべつにつがれる葡萄酒を、すこしずつ飲んで見る。料理と酒がなんともいえない諧調和をつくって、口の中が夢のようにおいしい。美食学というのも大したものだと思って感心する。なんだか、世界が広くなったような気がする。