Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ノンシャランどうちゅうき
ノンシャラン道中記
久生 十蘭
Read ノンシャラン道中記 (ノンシャランどうちゅうき) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,165 characters · 24 screens
もし、この炉で煮焚きをなさるならば、火をお焚きになる前に、この火掻きで、煙突を二三度ひっぱたいていただきたい、と申すわけは、一昨年からこの煙突の中に雀が二家族巣を作っているからであって、もしかして、雀に火傷でもさせたら、さぞ寝覚めのお悪い事であろうと思って、ご注意までに申しあげること。海の方へ向いたこの窓はよく閉まらないが、決して無理に閉めようとしてはならないこと。実は、これを余り手荒く扱うと、窓枠全体がそのままどなたかの頭の上に落ちて来る危険があるのであって、現に昨年の夏も、下宿の独逸人がこの窓枠の下敷きになって、一夏中、片足を使えないほどの手ひどい目にあったこと……
折柄、窓のそとは満潮で、あぶくを載せた上潮のが、くどくどと押し返し、巻きかえし、いつ果てるとも見えない有様であった。
二、朝日が昇れば川柳は緑に染まる。タヌの水浴着を持たされたコン吉が、漠然たる眼をしばたたきながら、入江伝いに来て見れば、鰯の腸の匂いを含んだ、やや栄養の良すぎる朝風が糸杉の枝を鳴らし、蕭条たる漁村に相応しからぬ優雅な音をたてているのだが、コン吉はそれほどまでに深く自然の美観を鑑賞する教養がないためか、いたずらに、臭い、臭いといって顰蹙し、この島における印象は、どうも飛んでもないところへ漂着したものだというところに落着した